8月号

「月刊小玉久仁子」8月号

「大きな絵を描く」(大きな絵を描く)

・はじまり
・制作レポート
・完成
・展示会
・クロージングパーティー

・はじまり
7月中旬 都内某所

月刊小玉久仁子創刊号であり、7月号は、大盛況のうちに幕をとじた。

その興奮冷めやらぬうちに、小玉久仁子は8月号の準備に取りかかっていた。
ホチキス米山と綿密な打合せを重ねる小玉久仁子

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米山「8月はなにをやるんですか?」
小玉「この国の未来を決めるといっていい選挙が終わって、私もいろいろ考える事が増えて…。」
米山「そうですね…」
小玉「猛烈な暑さが続いたと思ったら、ゲリラ豪雨。とかいって、ダムには水がなくて渇水でしょ、夏がおかしくなってる気もするし…。」
米山「そうですね…。」
小玉「海外に目をむけても、相変わらず争いはおさまらないし…」
米山「ですよね…。」
小玉「だから、あたし、絵を描こうと思うの。」
米山「絵ですか…。」
小玉「えぇ、絵を!」
米山「先ほどおっしゃってた、社会情勢などを題材にですか?」
小玉「いいえ、そういうのはまったくないです。とりあえず、絵を、絵を描きます。」
米山「そうですか…。」
小玉「そうだ、大きな絵を 描くわ。」
米山「大きな…ですか…それは、なんでですか?」
小玉「描きたいから!」
米山「どれくらい大きい絵なんですか?」
小玉「私、大きな絵を描く!」
米山「……わかりました。がんばってください。」

月刊小玉久仁子8月号「小玉久仁子、大きな絵を描く」
はじまります。

制作レポート1

月刊小玉久仁子 8月号 レポートその1

@8月3日 都内某所

本日小玉は8月号「大きな絵を描く」の為、都内某所、
某所というか新宿に買い出しに向かった。

迷う事なく世界堂に入り、「大きな絵を描く」為に必要な
モノを物色しだす。

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まずは色だ、今回はどうやら布に描くようなので、いつもとは違う絵の具を選ぶ。

もう頭の中には構想があるようだ。
迷う事なく数色を選び、手に取っていく。
そして、次は絵筆だ。人を殺しそうな眼差しで吟味する。

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「こんなんじゃダメだ。」
「豚の毛だ、しかも枝毛の豚の毛の筆が必要なんだ」

と少し近寄り難い独り言をいいつつ、真剣に筆を選ぶ。
大きな筆を手に取ったり、筆先をねぶったり。
世界堂さん、ごめんなさい、だ、本当に。

そして、小玉は世界堂を意気揚々と後にする。

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怪我人が出なくて、本当によかった。

世界堂を後にした小玉は、紀伊国屋書店に向かった。
資料探しなのだろう。芸術書のコーナー、7階を目指す。

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と思ったら、そっちは漫画コーナーですよ!!

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なんて、顔だ、どういう表情なんだ、これは。
漫画コーナで何を買ったのかは把握出来なかったが、
小玉はその足で、都内某所、あぁ、新宿ですね、

 

新宿のオカダヤに向かう。

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オカダヤは生地屋さんである。
今回の「大きな絵を描く」のキャンバスを探しにきたようだ。

そしてオカダヤを後にした小玉は、
これは、本当に都内某所としかいえない作業場に向かう。

本日手に入れたモノが本当に全部ちゃんと入っているか、
疑いながら丁寧に取り出す。

「わたし、石橋を叩いて壊しちゃうタイプの慎重派なんです。」

完全にリアクションに困る事を言われたが、
「そうですね」と、言っておいた。

これは、「月刊小玉久仁子」なのだ。
小玉久仁子なくしては、成り立たないのだ。

そして、全てを取り出して作業台の上に並べる小玉。
なぜか、誇らしげだ。

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買ったモノも確認出来、ご満悦の小玉。

 

 

しかし、広げたキャンバスを見てひと言。

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「大きすぎた、、、。」

どうする、小玉。

制作レポート2

月刊小玉久仁子 8月号 レポートその2

@8月某日 都内某所

今回の「大きな絵を描く」
モチーフは「花」です。

小玉は独特の言葉で、それらを言い表します。
そんな言葉を、小玉のデッサンと共にお送りします。
「実はモチーフとしてはあんまり好きではありません。
前提が、「美しいもの」ですから。奴ら。
美しくなる必要があって、美しく進化したものだから。
そこにどストレートに真っ向から立ち向かおうったってなかなか無理な話しです。
なので「写実」からは離れようと思います。最終的には立ち戻ってくるかもしれませんが。」
「とは言え、構造が難しいのがお花。
写実をはなれる前に仕組み確認と慣れの為に描き散らかします。
消しゴム禁止。」
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「花びらも魅力的ですが、葉もいい形をしておる。

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同じ一本がら成っているのに、
葉は花びらと全く違うもの。
葉はただ、より多く、効率的に太陽の光もしくは水分を補給する為に進化したもの。
効率的なものの形って洗練されてるからかっこいい。
うん、葉はかっこいい形のものが多い。」

 

 

「それにしても、なんでこんなに多種多様に進化したかね植物。
やっぱり人間より全然長く歴史を持つだけあるなぁ。
地面に根を張ってるから環境適応能力も凄まじく優れているのだろうなぁ。」

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ただただ、黙々とデッサンを重ねる。
自分の中の色んな言葉も含めて、鉛筆を走らせる。

まだまだ準備の段階らしい。

制作レポート3

@8月7日 新宿御苑

モチーフが決まり、デッサンを重ねる小玉。
やおら電話があり、「花を見に行く」と告げられる。

向った先は新宿御苑。ど平日の昼間。

「月刊小玉久仁子」取材です。
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御苑の中は平日ということと、緑の中ということで、
東京のど真ん中とはとても思えない様な、穏やかな時間が流れる。

そして、その中鬼気迫る形相で花々を写真に収めていく小玉。

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家族連れの子供が泣いちゃうよ

それにしてもこの日の東京は暑かった。
35℃近くまで気温が上がった。

そんな日差しに気をとられていたら、小玉がどこかに消えた。

どこだ?
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んん??
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いた。

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何をしているんだあの人は。

とはいえ、無事に花の写真を撮り終え、御苑を後にする小玉は、今日もご満悦だった。

「大きな絵を描く」

着実に前に進んでいる。

制作レポート4

@8月某日 都内アトリエ

遂に「大きな絵を描く」をはじめた小玉。

今回は下書きは一切せず、いきなり着色。
普段は途中経過を、あまり見せない小玉だが、今回は、途中経過も公開。
一緒に創りあげている感覚を体験してもらいたいと言う、小玉の心意気だ。
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「乾くと大分淡くなる。」らしい、それを計算して描くのが難しいようです。
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絵が広いのでだんだんとゾーン分けされてきたようです。
バラゾーン
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ポピーゾーン
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ファンシーゾーン
どうやら今回はこちら寄りの絵を目指しているらしい。
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そして、乾くと淡くなる問題と向き合いつつ、ゆっくりとじっくりと
筆をすすめる。油断すると無意識に描き込もうとしてしまうらしい。

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大きな絵だけに、あゆみはゆっくりだが、白いキャンバスにゆっくりと

すこしずつ色んな花が咲いていく様は、見ていて壮観。

完成はもう少し先だ。

制作レポート5

@8月某日 都内アトリエ

小玉は本日も粛々と都内にあるアトリエで「大きな絵を描く」をしている。
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今日はそんな小玉のこだわりの、絵筆、道具を紹介していきたいと思う。

今回使う道具たち。
長年、共にした戦友たち。

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そう語る小玉の表情が、付き合いの長さと、共にした苦楽を思わせる。
というか、大体いつもこんな顔をしている。
さて、まずは、なにはなくても、絵筆だ。
筆一本一本に、やはりというか、相当こだわりがあり、一本一本丁寧に説明してくれた。
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してくれたが、なによりこの表情と格好の方が気になる。
気を送っているのでしょうか?
このあと、絵筆が燃え出しました。
とかなりそうですが、なりませんでした。念の為。

 

お次は、絵筆をしまう、すだれの様な筆入れとでもいう代物。
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このなんと呼んでいいか迷う代物とも、付き合いが長いらしく、
それこそ絵を本格的に学びだした時からの付き合いらしい。
文字通り苦楽を共にしたと、語る小玉の表情は仙人みたいになっていた。
そして、なにやら最後に一番の熱量をもって説明してくれた、色んな色がこびりついた、
はたからみれば薄汚れた「布」。

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これで筆の微妙な水加減を調整するようだが、それぞれの色を指差して小玉は語る。
「これは、砂利塚の時、これはクライシスの時、これはいらない里の時‥‥。」
と、過去のホチキス公演を振り返る。

どうやら、チラシイラストの時に、その辺りを使ったという事のようだが、、、正直分からなかった。いや、言われてみれば、その様な色味だったなぁとは思うわけだが。

とにかく、この「布」こそ、ホチキスのチラシイラストを支えてきたことは間違いないようだ。

そして、彼女の戦いは続く。
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